既存顧客に追加提案できるかは、担当者の記憶に左右されます。以前どこまで提案したか、何を理由に見送ったか、契約後にどんな相談が増えたかを覚えていれば動けます。
顧客が増えると、この方法は続きません。情報を顧客・案件管理にすべて入れようとすると、今度は入力項目が増え、更新されなくなります。
私はBeekle CRMの役割を、営業案件とお金の管理に限定することにしました。会話、議事録、成果物、判断理由は別の社内知識の仕組みに残し、必要な時に生成AIから両方を参照します。
顧客情報を一つの画面に詰め込むと、使われなくなります
既存顧客の情報は、契約、売上、問い合わせ、会議、成果物、利用状況、請求など、多くの種類があります。
これらを一つの顧客画面に手入力しようとすると、項目が増えます。営業、開発、運用、経理が同じ画面を更新する必要が生まれ、誰が正しい情報を持つかも曖昧になります。
そこで、各情報の正式な保管場所を残します。
情報 | 正式に持つ場所 |
|---|---|
顧客、案件、金額、段階、次の行動 | Beekle CRM |
契約書、請求、入金 | 契約・会計の仕組み |
会議、社内チャット、提案理由、成果物 | 社内知識の仕組み |
利用状況や問い合わせ | 各サービス・運用記録 |
一か所に移し替えるのではなく、顧客番号や案件番号で関係をつなぎます。
追加提案は、商品一覧ではなく顧客の変化から考えます
既存顧客に順番に別の商品を案内しても、必要がなければ売り込みになります。
見るのは、顧客の状態が変わった時です。
- 契約更新が近づいた
- 利用者や対象部署が増えた
- 同じ問い合わせが繰り返された
- 導入時に残した手作業が負担になっている
- 以前は予算や時期の理由で見送った条件が変わった
- 担当者や組織が変わった
- 利用や連絡が減り、解約の兆しがある
変化が起きた時に、過去の提案、判断理由、似た顧客の事例を探し、担当者が確認すべき候補を示します。
生成AIが勝手に提案を送るのではなく、顧客に確認する理由を作るために使います。
生成AIには、顧客管理と社内知識を横断して質問します
情報の場所を分けたまま、次のような質問に答えられるようにします。
- 契約更新まで六十日以内で、過去三か月に未解決の相談がある顧客はどこか
- 以前見送った提案の理由が、予算や時期だった顧客はどこか
- 同じ種類の問い合わせが増えている顧客はどこか
- 追加提案より先に、解約や関係悪化の確認が必要な顧客はどこか
- 似た課題で、別の顧客に提供した事例はあるか
回答には、顧客・案件の記録だけでなく、元の議事録や成果物への参照を付けます。提案理由を確認できるようにするためです。
顧客・案件の管理を巨大化させず、必要な時だけ情報をつなぐことが、この設計の狙いです。
経営者には、連絡する理由がある顧客だけを知らせます
既存顧客を毎週一覧で見直す運用は、顧客数が増えるほど重くなります。そこで、条件に当てはまる顧客だけを一覧にします。
今週確認する既存顧客は二社です。
顧客A:契約更新まで五十二日。導入時に残した手作業について、同種の問い合わせが増加。利用範囲を確認する候補。
顧客B:最終接点から九十日。利用状況も低下。追加提案ではなく、継続意向の確認を優先。
担当者は、顧客の変化が事実かを確認し、連絡するかを決めます。提案内容は、人が顧客の状況を聞いた後に作ります。
現在は、すべての顧客データがつながっているわけではありません
Beekle CRMと社内知識の仕組みを分ける設計は決めていますが、利用状況、問い合わせ、請求がすべての顧客で自動連携されているわけではありません。
そのため、現時点では、契約更新、次の行動、過去の提案、議事録など、すでに取得しやすい情報から始めています。
不足データを生成AIに推測させず、「利用状況は未接続」「顧客の現状は未確認」と表示します。追加提案の精度より、誤った売り込みを避けることを優先します。
実際の顧客反応、追加提案率、受注率、継続率、粗利を見ながら、つなぐ情報を増やします。
顧客管理は、次の行動を決めるための道具です
既存顧客との取引を深めるために、すべての情報を一つへコピーする必要はありません。
営業案件とお金は顧客・案件管理に置く。会話と成果物は、それぞれの正式な場所に残す。必要な時に関係をたどり、顧客の変化と過去の判断を一緒に見る。
担当者の記憶に頼らず、連絡する理由が生まれた顧客だけを知らせる。
Beekleでは、この形で既存顧客の管理を作り直しています。追加売上だけでなく、継続、顧客成果、粗利、関係悪化の早期発見まで確認する方針です。
社長の時間を作るほかの取り組みは、社長の時間を作る経営DXにまとめています。
Beekleにご相談ください Beekleでは、AI活用や業務システム開発について、作るものの整理、費用感、進め方まで一緒に確認します。まだ曖昧な段階でも、最初に何を決めればよいかから相談できます。参考資料
- 粂田将伸『急成長を導く マーケティング×ストーリー×ファイナンス 起業の方程式』
- 根来龍之ほか『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』
