プロジェクトの進め方

生成AI/DXの導入は「業務可視化」から始める As-Is/To-Beで失敗しない進め方完全ガイド

現在の業務を確認し、重複や待ち時間を見直して目指す業務を決める図
まず現在の業務を確認し、重複や待ち時間を見直します。目指す業務を決めてから、システムに任せる範囲を考えます。

なぜ「いきなり生成AI/DX」は失敗するのか

「生成AIで業務効率化」「生成AIでDXを」。この数年、経営からの号令で大量の AI/DX プロジェクトが立ち上がりましたが、現場から聞こえる声は同じです。

  • 「結局、何が変わったか分からない」
  • 「現場で使われなくなった」
  • 「業務を分かっていない人が決めた仕組みで余計に手間が増えた」

経済産業省の「DXレポート2.2」や IPA の調査でも一貫して指摘されている失敗の根本原因は、ほぼ同じ点に行き着きます。

AI/DX導入の失敗の多くは、現状業務(As-Is)を見える化しないまま「ここをAI化しよう」と話し合った結果として起きています。

逆に言えば、業務の見える化を最初にやれば、ほとんどの失敗は防げます。本稿では、Beekleが実プロジェクトで採用している3ステップの導入プロセスを、ツール付きで解説します。

DX案件の失敗パターン全体は DX・システム開発で失敗する典型5パターン を、要件定義の進め方は 要件定義の書き方と実例 も参照してください。


失敗しない AI/DX 導入の3ステップ

Step 1: As-Is(現状)を関係者の作業ごとに見える化する

「現状」と一言で言っても、人によって見えているものが違います。経営層が見ているのは月次の数字、現場が見ているのは日々の手作業、情シスが見ているのはシステム構成です。AI/DX を入れる対象は 現場の手作業であることが多いため、ここを見える化するのが最優先です。

As-Is で書き出すべき項目

項目

例

工程(フェーズ)

受注 → 引当・指示 → 出荷

担当(レーン)

顧客 / 営業 / 事務 / 倉庫

各ステップ

「メールFAXで注文受領」「Excelに転記」「電話で在庫確認」…

所要時間(分)

各ステップで何分かかっているか

使用ツール

Excel / 電話 / 紙 / メール 等

課題(pain)

転記ミス、待ち時間、属人化 等

これをスイムレーン形式(横軸=工程、縦軸=担当)で図にすると、関係者が一目で「全体像」を共有できます。

失敗例: 文章だけで業務を説明する

「うちの受注業務はこんな感じです」と文章で説明すると、聞き手の脳内で別の業務が想像され、後で齟齬が出ます。図にすることで、認識のズレが事前に潰せます。


Step 2: 「どこをDXすべきか」を判断する

As-Is が描けたら、次は DXの優先順位 を決めます。判断軸は以下の3つです。

判断軸1: 時間・コストが偏っている工程

各工程の所要時間と人件費を集計し、ボトルネック上位3〜5を特定します。Beekleツールでは時給を入れると自動算出されます。

フェーズ

時間

コスト

比率

受注

35分

¥2,200

26%

引当・指示

65分

¥3,800

45%

出荷

50分

¥2,400

29%

上記の例なら「引当・指示」フェーズを先にDXすべきです。

判断軸2: 自動化/AI が効きやすいパターン

AIやRPA、API連携が効きやすいのは以下のパターンです。

  • 手作業の転記 → API連携/RPA で消せる
  • 紙・電話・FAXの確認 → デジタル化(Web フォーム、API)
  • 判断・分類・チェック → ルールが言葉にできれば LLM/分類モデルで代替
  • 待ち時間 → 並行処理化・通知の自動化

「AIで業務効率化」と漠然と考えるのではなく、この4パターンのいずれに該当するかでAI/自動化の効果を見積もれます。

判断軸3: 「課題が記入されているステップ」は最優先

As-Is で pain(現状の課題)が書かれているステップは、関係者がすでに困っている工程です。技術的に難しくても、ここを潰すのが最もインパクトが大きい。

Beekle のツールでは「To-Be 改善のヒント」が As-Is を自動分析し、上記3軸で DXすべきステップ を自動タグ付けします(自動化/AI適用/並行化/重点改善/ツール選定)。


Step 3: To-Be(改善後)について関係者で合意する

DXすべきステップが決まったら、改善後(To-Be)の姿を関係者全員で描きます。ここでやってはいけないのが「全部入りのバラ色のTo-Beを描く」ことです。

To-Be を描く時の鉄則

  1. Step 2で特定した上位3〜5ステップだけ をDXする。それ以外は As-Is のまま
  2. 各ステップで「何を導入すれば」「何が変わるか」 を明示(例: 「電話確認」→「在庫API連携」で「待ち時間ゼロ・人件費ゼロ」)
  3. 新しい担当(システム)レーンを追加 し、人がやらなくなる作業をシステムレーンに移動

失敗例: 「全部AIで」のTo-Be

「全工程をAIで」のTo-Beを描くと、開発工数が膨らみ、現場が新システムを覚える負担も大きくなり、結局使われなくなります。まず1〜2工程だけ を確実にDXして、効果が出てから次に拡げるのが鉄則です。

比較で削減効果を関係者に共有

As-Is と To-Be をツール上で比較すると、リードタイム・人件費・ステップ数の差分が自動算出されます。経営層への提案、現場への説明、開発会社への発注、すべての場面で同じ数字を共有できます。


業務の困りごとから開発範囲・画面・完成条件を具体化する流れ
困りごとを整理し、作る範囲、画面と操作、完成を確認する条件へ具体化します。依頼する側と作る側が、同じ条件を使って確認できる状態にします。

実例: 受注〜出荷業務のDX

Beekle のツールに入っているサンプルデータを使った具体例です。

As-Is(紙・電話運用)

ステップ

担当

時間

ツール

課題

メール/FAX注文

顧客

0分

メール/FAX

—

Excel に転記

営業

15分

Excel

転記ミス月3〜5件

電話で在庫確認

事務

20分

電話

折返し待ち

在庫あり?

事務

5分

—

—

注文書を紙印刷

事務

10分

プリンタ

紙の行き来で半日ロス

ピッキング・梱包

倉庫

60分

紙の指示書

指示書の紛失

送り状を手書き

事務

15分

ペン/伝票

宛名ミス

集荷・出荷

倉庫

10分

—

—

合計: 2時間15分 / 約 ¥8,392

Step 2の自動分析結果(DXすべきステップ)

  • 自動化候補: 「Excel に転記」(手作業×15分)、「注文書を紙印刷」(紙×10分)、「送り状を手書き」(手書き×15分)
  • AI 適用候補: 「在庫あり?」(判断ステップ)
  • 並行化: なし(待ちステップなし)
  • 重点改善: 課題(pain)が記入されている5ステップ(Excel転記・電話での在庫確認・紙印刷・ピッキング・送り状)

To-Be(システム化後)

ステップ

担当

時間

ツール

改善

Webフォーム注文

顧客

0分

受注Webフォーム

入力規則で誤注文を未然防止

在庫を自動引当

システム

0分

在庫API

電話確認を撤廃

在庫あり?

システム

0分

—

API判定

ピッキング指示を自動生成

システム

0分

WMS

紙指示書を廃止

ハンディでピッキング

倉庫

40分

ハンディ端末

誤出荷をリアルタイム検知

送り状を自動発行

システム

0分

配送API

宛名ミスを撲滅

集荷・出荷

倉庫

5分

—

—

合計: 45分 / 約 ¥1,867

削減効果

  • リードタイム: 2時間15分 → 45分(−1時間30分、67%削減)
  • 人件費: ¥8,392 → ¥1,867(−¥6,525、78%削減)
  • 課題: 手作業ミス・待ち・属人化 すべて解消

全部入りのDXは要らない、まず2割を確実に

AI/DX 導入で成功しているプロジェクトは、ほぼ例外なく 「2割の工程を確実にDX」 から始めています。残り8割は As-Is のまま動かし、効果検証してから次のフェーズで取り組みます。

80/20の原則: ビジネス価値の80%は、20%の工程に集中している。

Beekleにご相談ください Beekleでは、AI活用や業務システム開発について、作るものの整理、費用感、進め方まで一緒に確認します。まだ曖昧な段階でも、最初に何を決めればよいかから相談できます。 お問い合わせはこちら

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務可視化はどれくらい時間がかかりますか?

小規模な業務(1部門・1業務フロー)なら30分〜2時間、複数部門にまたがる中規模業務でも半日〜1日です。完璧は目指しません。8割書き出せれば次のステップに進めます。

Q2. AI/DXを導入する判断は誰がすべきですか?

経営層と現場担当者の両方 が参加するワークショップで決めます。経営だけで決めると現場が使わない、現場だけで決めると経営インパクトが小さくなる、のどちらかに偏ります。As-Isの図があれば、ワークショップが2時間→30分で完了します。

Q3. 生成AIの導入と従来のシステム化、どちらが先?

業務可視化が先、生成AIかシステム化かは後です。可視化したフローを見て「ルールが言葉にできる」「定型処理」ならシステム化/RPA、「判断や生成が必要」「非定型」なら生成AIです。順序を逆にすると失敗します。

Q4. 洗い出した「自動化候補」をすべて自動化すべき?

いいえ。提案はあくまで候補です。実際にDXするかは「投資対効果(ROI)」と「現場の受容性」で判断します。判定軸(時間×コスト×受容性)で候補を並べ、投資の順序を決めます。

Q5. 業務可視化を外部に頼むべきですか?

社内に業務理解者と図解スキルがある人がいれば社内で十分です。ない場合は、初回だけ外部ファシリテーター(Beekleなど)を入れて、2回目以降は社内で続けるのが効率的です。


まとめ:業務可視化を飛ばしたAI/DX導入は失敗する

AI/DX 導入の成否は、技術選定ではなく 「導入前の業務理解」 で9割決まります。

  1. As-Is を関係者で見える化する
  2. 時間・コスト・ボトルネックを洗い出し、DXすべきステップを判断
  3. 上位3〜5ステップだけTo-Beで改善設計、関係者で合意形成

「自社業務をどこからDXすべきか分からない」「AIを入れたいが現場が動かない」というご相談は、無料相談フォーム からお気軽にお問い合わせください。

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